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kimikura

2020/09/18

お茶の歳時記 秋編

投稿者:編集担当者

秘壷蔵と戻り鰹の巡り会い

きみくらのお届けするこの季節を代表するお茶と言えば秘壷蔵がその筆頭にあげられます。
江戸時代、幕府の命によって日本中の新茶を各地の窯元に依頼して製造した茶壺に入れ厳重に保管していたということに由来するこのお茶は、冷蔵冷凍技術が発達した現代でも敢えて人手で山奥のトンネル深くへと運び込み製造されています。 ワインが地下倉庫で熟成するように地中温度が一定に保たれる自然環境を利用し独特の味わいを生み出しています。
手間のかかる製造工程を経て生み出される秘壷蔵を季節と共により深く楽しむことができないか。 そう考えた編集部と製品を仕上げる茶師の間で話し合いを持ちました。
秋の味覚と言えば、松茸、栗、秋刀魚、などなど食の彩りも深まる季節の中で特に秘壷蔵と合う食材は無いだろうか?
そして話し合いを進め遂に最終候補にあがったのは焼津港で上がる秋の戻り鰹が合うのでは!?ということでさっそく秋の味覚を求めて焼津にある老舗『山政』を訪ねました。

炭火焼に込められるプロフェッショナルの技と情熱

本社を訪れるとすぐに何とも言えない良い匂いが立ち込め、それだけでご飯を何杯もいただけそうな美味しい空気が広がります。 山政は本社と並んだ敷地にある自社工場で鰹節、佃煮、炭火炙り焼きなどを製造しています。 工場の前で鰹節を天日干しをしながら気さくに話しかけてくれたのは山政一筋40年、鰹の仕入れも30年にわたって担当するという驚異的なキャリアを持つ後藤さん。
荒節から本枯節の種類の違い、仕入れや製造工程についての細かく丁寧な説明、仕入れた魚の品質や発酵段階の違いによる味や色艶の違い。 鰹についてのこだわりや愛情がひしひしと伝わり、その話は尽きません。
続いて炙り焼きを製造する工場内へ入ると、鰹のたたきを製造している現場に立ち会うことができました。 この製造を任されているのは炭火焼課の課長、山本さん。 山政のたたきは高知県の作り方と違い藁を使いません。 ガスや電気は使わず1100度以上の炭火熱のみで一気に水分を飛ばし表面を焼き上げます。
外はカリッと、中はジューシーに仕上げるには魚の状態に合わせて炭火をコントロールする熟練の技術が必要とされます。 さらに季節や天候を踏まえた微妙な温度設定などを常に気にしながら1本1本を仕上げていきます。 緊張感のある工場の空気は有名料理店の厨房の雰囲気にも似ています。
現在きみくらの新商品として炭火で仕上げるお茶の開発に取組んでいることもあり茶師の髙橋も興味深く山本さんの話を聞いています。 鰹への底しれぬ情熱と製造への熱意を感じた我々は、これは間違いない!と確信しその場で焼き上げたばかりの鰹のたたきを購入して山政さんを後にしました。

鰹と、熱々のお茶を

炭火で一気に炙られた鰹を捌いてさっそく薬味を添えて盛り付けてみます。 口の中で炭火の香りと共にやわらかい触感が広がり、普段食べているものとは一味違う驚くほどさっぱりとした味わいに山政の鰹へのこだわりと品質の違いを改めて思い知ることとなりました。
通常コスト面などから多くの鰹が海底から大量の魚を捕獲できる巻き網漁で獲られたものになってしまっているそうです、但しそのように水揚げされたものは細胞も壊れた状態で塩水に浸かって冷凍されてしまい食卓に上る前には塩分と水分を余計に含み、水っぽくなってしまうという欠点があるそうです。 品質や数量を維持するのは大変ですが、山政がなぜ買付段階で一本釣りの鰹にこだわる理由がこういう所にもしっかりと表れています。
秋の訪れと共に味わいの頂点を迎える熟成茶の秘壷蔵、そして焼津港で9月頃から水揚げされる戻り鰹を使った究極のたたき、みなさんも堪能していただけたら嬉しいです。

秋の秘壷蔵をもっと美味しく!

秘壷蔵は新茶の時期に採れた貴重な茶葉を少し強めに火入れをした状態で仕上げて袋詰し、9月上旬までこの山奥にあるワインセラーとしても活用される天然の保冷庫に運び込みます。
こワインセラーのあるトンネルの中までは車両が入れないため、毎年製造部の社員たちが20kg近い茶箱を100個以上担いで保管庫に出し入れしなければなりません。
この貯蔵庫の温度は約16度のまま年間を通じ一定に保たれるので、茶葉はゆっくりと味わいに丸みを帯びながら熟成していきます。
そして今回の鰹のたたきと一緒に召し上がる際は熱々のお湯で淹れていただくのがオススメです。 湯をいれたら7から10秒ほど茶葉が開くのを待って、湯呑に淹れるときには急須の中で湯をグルっと回し出すようにして最後の一滴まで注ぎきってみてください。 旬の戻り鰹のしっかりとした風味と熟成して丸みを帯びたこのお茶の奥深い渋みがとても相性良く互いの味を引き立たせてくれます。
新茶とは少し違った落ち着いた大人の魅力をもつ秋限定茶の秘壷蔵をこの機会にぜひお試しください。

きみくら編集部

株式会社山政
農水産食品製造販売
静岡県焼津市東小川2-4-14 TEL:054-626-8003
http://www.yamamasa.co.jp

山政は創業百十年あまり、受け継がれた伝統と職人の技。 三越創業時からの歴史があり宮内庁や三越伊勢丹をはじめとした名のある小売店での取り扱いがあります。