
一番の食べころを迎えた旬の素材に感じる格別な味や香り、すっと染み込んで身体が目覚めるような瑞々しさ。ほんの短い旬を愉しむ贅沢な時間は美味しさだけではなく、心にも潤いを与えてくれます。
毎年欠かせない定番の楽しみかたから、誰かに教えたい新しい楽しみ方まで、「お茶と旬」をテーマに季節の味わい方をうかがいます。
vol.02 / 新茶 × あさり

海開きはまだまだ先ですが、潮干狩りができる海岸は既に賑わいつつあります。潮干狩りは、採れたあさりを調理して食べるところまでが楽しいですよね。あさりは海水が20度前後になると産卵しますが、この繁殖期のあさりが最も肉厚で食べ頃です。

定番の酒蒸しやあさりバターなどは、調味料も少なくてシンプルな料理ですよね。そこに茶葉を少し加えると、あさりの臭みも消え、お茶の旨味も味わえます。今回は茶葉とバターを混ぜた「お茶バター」を使って味付けしてみてはいかがでしょうか?
バターが香るあさりの酒蒸しレシピ

料理酒やネギの代わりに白ワインやパセリで作っても、煎茶との相性は抜群です。あさりが持つ塩分バターの油分をさっぱりするような新茶と合わせるのがオススメです。強めの塩気でお茶が進む一皿ですが、無塩バターで作ると優しい味わいになります。お好みでお葉バター(分量外)を最後に添えると、茶葉の食感の違いも楽しめます。
お茶バターはラップなどで包めば冷蔵庫で数日保存できます。ハーブバターのように気軽に、蒸し料理など温かい料理に使ってみてくださいね!
材料(1皿分)
お茶バター(作りやすい量)
- 有塩バター10g
- 煎茶の茶葉1g(バターの量の10%)
あさりのバター蒸し
- あさり160g程度
- お茶バター5~10g程度
- にんにく1片
- 酒大さじ1.5
- 水または煎茶大さじ1
- 小ネギなどの薬味少々
つくり方
- 下準備: あさりは砂抜きしておき、バターは常温に戻しておきます。
- 1. バターと茶葉をよく混ぜ、使う時まで冷蔵庫に入れておきます。
- 2. 薄くスライスしたにんにくとお茶バターを弱火で熱し、バターが溶けたらあさり、料理酒、水(または煎茶)を加えて、必ず蓋をして、あさりが全て開くまで蒸します。
- 1. 2を軽く揺すって混ぜ、小ネギなどの薬味を加えたら完成です!


待ちに待った"お茶の旬"が到来

立春から数えて八十八日が経つ5月2日頃になると、農家さんは毎日、その日の天候と芽の生育を見て、いまかいまかと、摘採のタイミングを計ります。永年お茶を育てている熟達者たちが「旬真っ盛り」を見極めて摘み取った新芽は、お茶が美味しいとされる甘みや旨み、コク、ほのかな渋み、そのすべてが凝縮していて、栄養もたっぷり。しっかりと太陽の光を受けてエネルギッシュに育った力強い味わいが楽しめます。
「新芽」「一番茶」って?

冬の間長い休眠状態となるお茶の樹は、春を迎えると黄金色の新芽が芽吹きゆっくりと成長します。
「きみくら」が本店を構える静岡県掛川市では5月の初め頃、市内のお茶畑の畝が一斉に新芽の若葉色に覆われます。
その年はじめて摘みとった新芽でつくるお茶を「一番茶」や「新茶」といい、一番茶は二番茶より新鮮な香りが高く、リラックス効果のある成分もたっぷり含まれます。
お茶と食材それぞれの旬の出会いを愉しむ
同じ時季に旬を迎えるもの同士の、最高に贅沢な組み合わせ。
新茶ならではの香りや旨みをじっくり丁寧に味わうのはもちろん、野山の幸や海の幸など、相性のよい食材を掛け合わせることで一層引き立てあうそれぞれの特徴や香り、おいしさの相乗効果をたのしみながら、旬を味わっていただけたら嬉しいです。