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茶師として生きる

投稿者:丸山製茶 茶師・髙橋嘉伸

お茶に関わる全ての人へ

ある時、静岡の茶業にも多大な功績を残した故・榛村純一氏(元掛川市長)が私たちの会社を訪れたことがありました。私も社長に呼び出され、その場に同席する機会を頂きました。その頃の私は茶業に携わる若者として地元メディアに紹介していただき、駆け出しの茶師としてテレビなどに出演していた時期でもありました。 しばらく社長と話したのち、榛村元市長は初対面の私に「君に聞きたかったことがある」とこちらを向き「君にとって茶師とは何だね?」と尋ねられました。 あまりに唐突だったので言葉に詰まってしまい「美味しいお茶をつくる人でしょうか?」と返してしまい、緊張していたとはいえあまりにも情けない自分の対応に顔から火が出るような思いで下を向いてしまいました。隣で聞いていた社長は笑いながら「その問は君にとって永遠のテーマだな」とフォローしてくれました。それ以来、私のなかで「茶師とは何なのか?」常にその問いが頭を離れなくなりました。

新茶を迎え仕入れを経験する度に、お茶をより美味しく仕上げるかを考える度に、いつもその問いが立ちはだかり、気がつくと答えに近づいたようで、また遠ざかってしまう。そんなことをこれまでに何度も繰り返してきました。 そのシンプルで深い問いはいつも自分を悩ませますが、いま私の中にある考えは茶師とは「茶に関わる全ての人を幸せにする人」ではないか、というものです。 ここで言う「茶師」というのはお茶の生産と消費の中間に位置する茶商(お茶を商いとする会社や人の総称)のことです。生産者と消費者の間に立ち、魅力ある製品として仕上げるのも勿論ですが、その根底にある茶に関連する歴史や文化を世に伝え、同時に茶産業を継承していくため新しい茶師としての姿を自らが体現していくことも重要な仕事だと考えています。

茶師として過ごす新茶の1日

最も忙しく気が張り詰める新茶時期、茶師や茶農家がどのように過ごすかご存知でしょうか。八十八夜が近づき茶工場も稼働する体制が整うと、日本全国で新茶シーズンが訪れ、主に煎茶・玉露・抹茶などの順に次々とその年の茶葉が出揃ってきます。茶は天候の影響を受けやすいので日々刻々と取引相場も変動します。 茶師は毎日早朝から何十種というお茶をひたすら飲み比べ、相場を見ながら仕入れを起こしていきます。(始めの頃はお茶を飲みすぎて胃が荒れて仕事になりませんでした)とにかくいいお茶が市場に出ると、どの茶師も欲しがりますので、分単位・秒単位で判断し取引をしていかないと仕入れ機会を失ってしまいます。1年分の原料をたった数週間ですべて仕入れる事になるわけですから茶師としての責任は重大です。ここで誤った判断をすると、その年のすべてのお茶づくりに影響が出てしまいます。

茶農家もこの時期ほとんど休む暇はありません。農家は露が多ければ夜明け前から畑にでて払い、日中は摘採した生葉が新鮮なうちに茶工場へと運び込みます。茶葉は収穫した瞬間から品質が劣化し、積み上げたまま放置すると数時間で荷重や熱で傷んでしまうほど繊細です。(現在では輸送するトラックや一時保管するコンテナにも空冷機がついています)深蒸し茶の場合、茶工場へ運ばれた茶葉はそのまま蒸機、粗揉機、揉捻機、精揉機、乾燥機、選別機、などを6時間近くかけて通ったあとようやく出荷できる(注1)荒茶となって袋や缶に詰められます。茶工場ではたくさんの機械が同時に動き、蒸気を吹き上げ激しい音を出しながら慌ただしく稼動します。 (注1)荒茶…摘採された生葉から製造される仕上げ段階前の茶葉。水分量を5%程度含む。

夕方摘採した茶葉が仕上がるのは深夜になることも多く、摘採の計画・準備、機械の掃除、袋詰作業などを済ませ、翌朝には私たちの手元にお茶を届けなければいけません。こうしたお茶をつくる人たちの懸命な努力があって初めて私たち茶師がそれを仕入れることができるのです。私たちが毎日の暮らしのなかで美味しいお茶を飲めるのは、ひたむきに茶畑に手をかけてきた農家の人々、この時期に畑や茶工場で昼夜を問わず汗を流す茶業に関る多くの人たちの懸命な努力があってこそ成り立っていると改めてこの時期に実感することができます。

今年の新茶もより良いものが出来るよう、「茶師」とはなにか、その問いに向き合いお茶づくりに励みたいと思っています。

2021年新茶ご予約受付がはじまりました
  • 吟撰大はしり【4/29-5/2頃 仕上り予定】
    『吟選大はしり』は特定の畑で育てられた平地と山間地の茶葉を使用しています。 十分に生育していないこの頃の新芽は天候によって日々刻々と変化するため 材料の茶葉は特に慎重な選定をしています。 平地の茶葉は味わいがよく、山間部の茶葉は香り豊かで品がよいのが特徴です。 それぞれの素材の良さを活かし最高のお茶の組み合わせを探っていく様に 一切の妥協はなく、まさに茶師の腕が光る最上級の限定新茶です。
茶師・髙橋嘉伸

1988 年静岡県袋井市生まれ。料理人の父に影響を受け調理専門学校へ。卒業後ホテルにて日本料理を担当。22 歳で丸山製茶に入社後、お茶の製造工程を一から学び茶師となる。2015年第9 回同一荒茶仕上競技会で最高金賞を受賞。料理経験を活かしペアリングメニューの開発や手揉みのお茶づくりにも取組む。

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